正夢シャワーをあびると少し、ほっとする。日本人は湯舟に肩までお湯につかるのが、ベストに違いないが、シャワーで汗を流すだけでも、全然ちがう。柴がでると、タオルが置いてあった。おろしたてのタオルらしかった。もちろん、替えの下着など持ち合わせがあるわけもないが、それでも、気分は違う。 「わたしも浴びてこようかな。」 「そうしなよ。」 すっかり片付いたテーブルの上に新聞が置いてあり、柴は、コマンダーでテレビのスイッチをいれた。夜中の2時近くというのに、どのチャンネルも、はっきり言って内容は50歩100歩の内容だ。 浴室からは、美佳がシャワーを浴びる音が聞こえてくる。 10分ほどたって、シャワーの音がやみ、美佳が脱衣所にでてきて、身体をふいているところが、すりガラスをとおしてみえた。 きょうは、寝ないで明日を待ち、宝くじの発表を見にいく。 そう強く意識をしていた二人であったが、そのあと、そこには、お互いの身体を求めあう、男と女の、あられもない姿があるだけであった。 そして、疲れ果てたふたりは、すっかり寝入ってしまった。 最初に気づいたのは、美佳だった。いつもの癖で、携帯の時間を見る。6時30分。まだ、時間は大丈夫だわ、そう思って、よく日付けをみると、丸一日とんだ日にちを携帯が表示している。 「ちょと、おきて、たいへん。」 柴も、目をこすりながら、我に返る。となりに裸のままでいる美佳に驚きつつも、自分も下着もつけないままの姿でいることに、カーテン越しの朝日が、羞恥心を柴におもいおこさせた風であった。 「あさってになってるわ。」 美佳はあわてて、テレビをつけてみる。 きのうのニュースは、すでに自分たちがまだ経験していない明日のニュースを昨日のニュースとして報じている。 「ということは、」 美佳は、ポストにはいっている新聞をとった。社会面の右端にある宝くじの当選番号の記事をみる。 柴は、買った宝くじの番号をパソコンに入力していた。カバンからパソコンをとりだし、一等の番号を照合する。 「あたったよ。あたってる。」 2億円があたっている。たしかに、目の前の事実は現実の事実として存在している。 ふたりとも目はとうに冷めた。というか、寝ぼけているわけにはいかない。 「夢のお告げは本当だったんだ。」 |